シューベルトの未完成交響曲を聴く
2024年03月09日 00:00
小澤征爾が亡くなり追悼の音楽番組が放映されている。
その一つに2016年ウィーンフィル来日公演で氏がシューベルトの未完成交響曲を指揮したのを聞いている。
当時の年齢は今の私と同じくらいだが、病との闘いと克服の中で老いを感じるものの音楽は瑞々しいし、氏の顔には音楽を奏でる喜びが溢れていた。
未完成交響曲の第二楽章は美しいメロディに溢れ流れが人の一生の物語と重なる。幼い頃を思い出した。
65年も前の日本は経済的には貧しく今の様な娯楽もなかったが、父が友人が撮った北アルプス登山のスライドフィルムを家で上映してくれた。その映像のバックにはクラッシック音楽を聴くのも初めての経験だったが、シューベルトの未完成交響曲第二楽章が使われていた。真っ暗にした部屋に吊るされた白のシーツに映像が映され音楽に合わせて映像を切り替えてくれ、上高地の林を抜け急坂を登り槍ヶ岳山頂に辿り着きそして帰途につく登山は人生そのもの、シューベルトの音楽は映像と見事にマッチしていた。
家族全員目を凝らして山の美しさと音楽に酔いしれたのを覚えている。
今小澤征爾が奏でるシューベルトの未完成交響曲を聴くと鮮やかに記憶が蘇って来た。幸せな時間だった。
