女優中谷美紀のコロナ禍でのオーストリア生活

2021年02月27日 00:00

Amazonの本のおすすめに〈中谷美紀のオーストリア滞在記〉が目に留まった。
彼女はテレビドラマなどで知るほか美術の紹介番組などにもナビゲーターをしていたので知性豊かな女優だなと思っていた。本のタイトルがやけに気になり少しミーハー的に内容をチェックして見たら、意外な事を知った。彼女は数年前にウィーンフィルのビオラ奏者と結婚し日本での仕事とオーストリアの家庭生活の行き来をしていたが、今はコロナ禍でオーストリアで夫と巣籠もり生活をしているとの事、その3か月の生活ぶりを日記風エッセイとして書いた本だ。
日記はコロナ禍の中で毎日の出来ごとや感じた事などが丁寧にかつ生き生きと書かれていて、新しい異国家族との関係やお国柄や文化の違いへの戸惑いや悩みが沢山の好奇心や探究心そして向上心に支えられながら幸せな時間に変へていく姿が読み取れる。
ザルツブルグの自然豊かな山間の田舎に住み、コロナ禍で音楽の仕事が無くなった夫とナチュラルガーデン作りに励み、ベルリンに住む義理の両親とドイツ語でコミュニケーションしたいとドイツ語の勉強に格闘する日々を過ごしながら自然に囲まれた暮らしを楽しんでいる。そして人生を楽しもうが身上の夫に誘われて山歩きに始まりザルツブルグやウィーンの音楽仲間との交流や演奏会での音楽描写そして夫が連れて行くレストランでのシェフとの会話など多様な内容で興味が尽きない。
どうも料理も得意らしくレストランで食べる料理やワインの表現も思わず唸るし日々の家庭料理は知らない食材も多いが文章で綴る食卓は美味しそうで参考になる。そして日々の日記の最後に食事中に流しているクラシック音楽のタイトルが粋な〆になっている。また友人夫妻を招いてのホームパーティ、メニューを考えながらの食材調達、下準備、調理しながらの会話そして帰途に着いた後の夫婦の会話と充実した1日を数ページにわたり表現豊かに書く才能も素晴らしく楽しく読めた。
こうした異文化の中で生活し日本では経験できない交友の場を楽しみ、異国ならではの困難はポジティブに受け止め成長の糧として行く彼女の生き方は女優の世界でも成長が期待できそうに思えた。