企業の社会との関わり考
企業もしくはその創業者が利益や資産の一部を社会活動に還元しているのはかなりの例を見るし私自身もその恩恵を享受している。
世界的に一番有名なのはノーベル賞であろうか、日本にも京セラの創業者稲盛さんの京都賞がある。文化的なものではクラボウの創始者の大原さんの大原美術館を筆頭にブリヂストン美術館やポーラ美術館そしてベネッセの直島プロジェクトなどは誇るべき日本の価値になっている。私もそれらの美術館などを訪れ素敵な時間を味わってきた。海外ではフランスの実業家ピノー(グッチ、サンローランなどのグループの総師)が建築家安藤忠雄と組んで歴史的建造物を美術館として再生させたベネチアの「プンタ・デラ・ドガーナ」やパリの「ブルズ・ドウ・コメルス」なども素晴らしい人類への贈り物だ。タイヤメーカーのミシュランがやっている「ミシュラン・ガイド」なども加えていいだろう。
こうした社会貢献は元来欧米の歴史のある企業や創業者に古くから定着していた価値観である。こんな事を書くきっかけはたまたま新刊書で『木』と言うタイトルの本を手にした事による。この本はエルメス財団が推進するプロジェクト「スキル・アカデミー」の一環として企画された書籍シリーズ「Savoir&Faire」に11人の日本人の歴史、哲学、科学、芸術、現場などの視点から論考を加えて構成されているもので自然素材の木の魅力とそれを加工する職人の技を多面的に記述している。
私は木に関する本の中身に興味を持ち読みたくなったのだが、それ以上にフランスの著名なブランドであるエルメスの社会貢献活動に気持ちが動かされた。美術館などに比べ地道な活動に見えるが企業の中にこうした文化が当たり前の様に住み着いている事が、もしかしたらエルメスの商品が語る無形の価値やそこで働く人々の誇りそして企業価値を高めるのに深く関係しているのでは無いかと思った。エルメスは「私たちの行いが、私たちをつくる」をモットーとしてると言う。
企業は目先の利益だけを追求しているだけでは社会に認められ長く生き続ける事はできないと思った。