原研哉の〈低空飛行〉を読みながら
原研哉はグラフィックデザイナーであり美大の教授、これまでも何冊かの本を読んできたが今新しい視点の本を読んでいる。
タイトルは「低空飛行」とあるが、日本の豊かな自然風景を味わう新しい旅のスタイルに空想の眼を向けている。戦後のインダストリアルの成功体験の物語も終焉の時を迎えている日本、次なる成長物語は豊かな自然風景それも今まで見たことが無い視点から味わい直す観光にあると言う。新たな観光は低空飛行による視点、そして自然風景を味わい直すホテルの在り方による発見の旅。
私も風景には心惹かれ、飛行機に乗る度に窓から見える風景写真を撮るのを楽しみにして来たが、その多くはジェット機でかなりの高度からの風景で唯一ニューオリンズからサンフランシスコのフライトの時機長が空中散歩すると言って高度を下げてくれ空から見る雄大なグランドキャニオンやヨセミテの風景に感動した記憶がある。
風景とホテルが一体となりそこに身を置いて感動した思い出は沢山の旅をしているが余りない。強いて言えばノイシュバンシュタイン城の見えるホテルに滞在した時のバイエルン地方の森と田園の風景と城とが一つになった中に身を置いた時だろう。もう一つ、友人夫妻と台湾の旅の中で阿里山の麓のゴルフ場のコテージに泊まった時、自然風景の中で朝のひんやりした空気と太陽の光の中でテラス席でのんびりと朝食を食べた時の至福の時も忘れ難い。日本は風景遺産が豊富だからそれを気軽に楽しむ安らぎの宿が多くできてくるのだろうか?今までも上高地帝国ホテルや軽井沢星のやなど幾つかあったが我々には少し高級すぎた。
コロナ禍が終焉した暁にまた旅に出るとしたら、自然風景の中で豊かな時間を味わえる宿に泊まりゆっくりした旅にしたいと思う。