懐かしい本の中の世界
2019年03月07日 09:36
最近アマゾンで古い本を買って読んでいる。
30年以上も前に発刊された辻邦生の“遥かなる旅への追想”と“夏の光に満ちて”であるが、40歳台に彼の“美しい夏の行方、シチリアの旅”を読んでシチリアの風景や暮らしに憧れた記憶が蘇り彼の旅の世界に浸って見たくなった。
彼は小説家にして大学の先生でもありパリの大学でも教えていたから生活者として外国に住み旅もしているから普通の紀行文とは違う洞察と味わいがあった。例えばパリの夕方の透明感のある空の色を見て“神々の黄昏れ”と書いているが、分かるような気がする。
また古い頃の作品とは言え私が海外への出張や妻との旅行を経験し始めた時代と重なるのでタイムスリップしたように街を歩いているような感覚が持てる。私は日本でも昔の街並みが残る町を歩くのが好きであるし欧州の旅でも時間の許す限り路地など古い町並みをのんびりと歩く。欧州の街は昔からの姿を今に良く残し人々がそこで生活しているからタイムスリップと言いながらも本の中の世界に古さなど余り感じない。唯一古い本だなと感じるのは日焼けした紙とカビ臭いことだけである。
本も人と共にあるようだ。