木と人との一期一会
木は世界中に生息しているが国ごとの主たる木はそれぞれ違っていて、それが其の国の景観をしいては文化を特徴づけていると言っても良い。
日本は杉等の針葉樹や常緑樹が多く私が多用する広葉樹は比較的まばらなので、うっそうとした暗い森のイメージが強い。しかしそれが紅葉の季節には深緑と鮮やかなモミジとのコントラストが世界一の奇麗な風景を作る。一方、欧州等は広葉樹が圧倒的に多いから森が明るく多くの動物やキノコ等に恵まれているが森の景色は単調になりがちだが古い町並みと馴染む。
私が家具等の木工品を作る時の材料はこうした広葉樹の森の贈り物が多い。私が好きな樹はウォールナット、ハードメープル、ブラックチェリーあたりと黒檀やローズウッドなど南洋材の硬木。其の中で素晴らしい杢目の木に出会えるのがウォールナットで瘤周りや横枝の生え際等に良いものが出る。ただし、プロの人は原木を見て買うので木匠ジョージナカシマさんの作品に見れる様にそれっこそ惚れ惚れする杢目を手に入れる事が出来るが、私は新木場の材木屋でたまたま見つかる幸運に出会えれれば手にいれるしか無いのである。
最近、私の木工品の愛好者であるY夫人からカッティングボードの製作依頼がありご希望のイメージを表現するためにストックしておいた板から素晴らしいウォールナットの木を見つけ、杢目を生かした形状デザインを提案して採用されたものがある。此の板は節が有ったりして使いにくいので一般的に売れない木かもしれないが、私が手に入れた中でも特に美しい杢目だと思う。そしてYさんの依頼に一期一会の出会いがあって生かされる場所を見つけた幸運な木である。
こうして作った作品が使い手に渡り幸せな気分になって頂けるのが作り手として一番嬉しい。今日Yさんにお渡して、この世に一つしか無い作品を見るお顔から満足な様子を感じた。