木と共に生きる
木と共に生きる、木工を生涯の仕事としてやって来た訳ではないので私には大げさな言い方だが、たまにそんな思いをする事がある。
会社生活にピリオドを打ってから趣味で木工を始め2回ほど個展を開いた。木工作品は孫のおもちゃや家具と自宅の家具・カトラリーに加えて時々友人から頼まれたモノを作っている。その中でもアロマセラピーをやっている女性から頼まれたのがキッカケでアロマペンダントを沢山製作し多くの人々に買って頂いた。私のオリジナルデザインもあるが、依頼主から思わぬデザインを頼まれ作る事がある。その場合には頂いたデザイン図を元に試作して何回かやり取りして完成させるプロセスをとるが、自分には思いつかなかった形が出来上がった時の喜びを感じていた。
今回頼まれたのは八分音符をモチーフにしたモノとの指定で丸型のペンダントの表面に音符を彫り金色の漆を塗ったものを試作し提案したが、イメージに合わなかった様でゼロからのやり取りを繰り返しお互いのアイデアから生まれたデザインになった。本体は五線紙をイメージしてポコデの木目を生かして作って見たら気に入ってもらえたようだ。
やっと完成し依頼主へ届けたが、後日丁寧なメールを頂いた。そこに記されていたのは自分はピアノの教師であり合唱の伴奏をしている。その仲間に癌と向き合い闘病生活している人がいてその人へプレゼントをしたく自分用に加え追加注文をしたと、そして来週からコロナ禍の中で練習を再開するのでタイミング良く渡せるので嬉しいと。そんな背景をもった依頼主とは知らず今回の作品が出来上がったけれど、私は何だかそこに心温まる豊かな物語が存在している様な気がした。
出来上がった作品を心から喜んでいただけ作り手の幸せを感じている。