桂離宮に日本の美を見る

2015年11月27日 20:00

京都には宮内庁が管理する庭園が幾つかあるが、3年前の修学院離宮に続き今回は桂離宮を初めて拝観することが適った。

桂離宮は1600年代に八条宮が造営したもので創建当時の姿を今に残しているが、ドイツの建築家ブルーノ・タウトが戦前日本に滞在し“日本美の再発見”などの著書を通じて桂離宮の様式美を日本人に知らしめるまで忘れ去られていた。明治維新以来、西洋を文明の鏡として邁進して来た日本が改めて自分の国の文化の価値を教えられたと言う。

前日までの天候が嘘の様に晴れ渡った月の名所でもある桂の地に外界とは遮断され、池を配置した庭園と茶屋と書院とで構成されている。入口には特別に招待された人と言う様な顔つきで人々が集まって来た。ここは完全に管理された見学しか出来ないが30名程度が集団で移動するので、目の先は誰一人としていない風景が広がり、自分一人が独占した気分で庭と建物の佇まいを見る事ができ写真も撮れるのが嬉しい。

それぞれの茶屋はシンプルであるが様式美が見事でモダンとも言える壁のデザイン、ふすまの取手等の優美な意匠、そして柱や梁が額縁となり見える部屋からの景色は丁度紅葉が奇麗で優雅である。歩道は色々な意匠の飛び石で作られていて、もう一度足下だけを見ながら回遊してみたくなる。そして高床式の書院の端正な佇まいは正しく様式美の極致である。

文明は進化するけど、文化度は果たしてどうだろうか?日本の美を再認識した時空間であった。