蕗の薹の思い出
2024年03月01日 00:00
春先、近くの山の傾斜地で蕗の薹を見つけた。
私は信州育ちなので、母が作った蕗味噌の味が忘れられない。4月後半の雪解けの頃に信州の山野をドライブした時に、窓越しに雪が残っている道端に僅かに顔を出している蕗の薹を見つけるとブレーキを掛け皆んなで車を降りて蕗の薹を取りに走る。林の中の道端の傾斜地は雪解けも早く蕗の薹もたくさん出てくる。
家に帰るなり母は蕗味噌を作る、味噌と砂糖を油で炒めそこに大量の蕗のとうを刻んで混ぜ合わせると香り高い匂いが立つ。そして次に他の山菜と共に天麩羅となる、これが信州の春のご馳走だった。
横浜に住んでもあの香りは忘れられない、春になり近くの丘を散策する時はもしかしたら蕗の薹が出ているのでは無いかとキョロキョロする。今年自宅近くの山の斜面になにやら蕗の薹らしいものを見つけ駆け上がるとあるはあるはの蕗の薹。家に持ち帰りさっそく蕗味噌を作り、夜は他の野菜と共に天麩羅にした。
それなりに美味しかったが、蕗の香りはするものの昔の様な野性的な香りは少なく感動も少なかった。雪の下でじっと雪解けを待ち土を分けて世界をのぞく過程を経てない都会の蕗の薹は強い個性を消してしまったのだろうか?
季節感を食材で感じる事がなくなって来た現代社会、寂しい気持ちがする。