松方コレクションの謎を知る
2023年08月30日 00:00
国立西洋美術館は松方コレクションを展示するためにコルビジェの基本設計により作られた。
ここには何度も足を運びルノワールの〈アルジェリア風のパリの女たち〉やモネの〈睡蓮〉などの名画とロダンの彫刻を見て来たが、松方コレクションの経緯にていては余り知識が無かった。最近原田マハの〈美しき、おろかものたちのタブロー〉を読み、西洋美術館が出来た経緯を史実に基づいたストーリーとエンターテイメント性が融合した小説で知り味わった。
戦前に川崎造船所社長の松方が日本の文化水準向上のため蒐集した絵画が第二次大戦の中で日本人の手でフランスで密かに保管されナチの手から守られたこと、戦後フランス政府との難交渉により20点程の国宝級を除いた何千点の作品が寄贈返還されたこと。そうしたドラマがあって今我々が日本で見ることが出来る。
前にパリを散策しオランジュリー美術館でゴッホの〈アルルの寝室〉を見たが、これはフランス政府が返還から外した事で日本では見れない名画だった。ルーブル美術館のセザンヌ〈サント・ヴィクトワール山〉も然りである。
大原美術館やアーティゾン美術館などにも売却されたコレクションの一部があるので西洋美術館と合わせてまた見ておきたい。
美術好きの旅の思い出と小説を重ねながら楽しむのもなかなか味わい深い。